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try to get the bottoms

パンツ,ズボン,ボトムス,
スラックス,トラウザーズ,パンタロン・・・
そういった類の衣服を購入する際に,
避けて通れないのが「試着 at 試着室」。

それは本来,お買い物に向けて
一気にテンションの上がる
楽しい時間のはずであるが,
緊張のあまり,楽しいどころではなく
むしろ避けて通れるものなら避けて通りたい,
と思っているお洒落ピープルが多いのも事実。

その日僕は
とある古着屋にいた。
といっても特に買い物の目的はなく,
あくまでも「見てるだけ」というスタンスで。

だが,その店でふと見つけた,
Leeのコーデュロイパンツ。
made in U.S.A。
デッドストック(新品)で5800円。
色・サイズも豊富に揃っている・・・。

「デッドストック/この価格/まさにお買得/いざ試着」
と心の中で(ヒップホップ風に)つぶやいた僕は
「とりあえず試着するだけしてみて,
もしもすごーく良かったらその時は買っちゃおうかな・・・」と
心が揺れる。

こんな時,店員さんがさりげなく近づいて来て
「よかったら履いてみるだけでもいいんで・・・」
なんて親切に言われたら,
「え,じゃあちょっと。でも履いてみるだけですよ本当に。」
なんて言いつつそのまま衝動買いしてしまうところだが,
この店の店員さんはというと・・・

レジのところで二人,
ずーっとしゃべっていて
こっちを気にする気配もなし・・・。

しかもその会話の内容はというと・・・
「昨日面接に来た奴どうだった?」
「なんか古着かなり好きみたいッスよ。
オーバーオール着てました。」
「マジ?面接にオーバーオール?ガハハ。」
こんな会話。
それも店内の客,全員に聞こえるような大声で・・・。

雰囲気悪いし,試着は断念,
とりあえず店内一周して,
もう帰ろうかと思ったけど・・・
やっぱり気になる。

さんざん迷った挙げ句
「すいません,これちょっと履いてみていいですか?」
と言うと店員さん
「え?あ,どうぞ」
とそれだけ・・・。

仕方ないので一人で勝手に試着室へ行き,試着。

が,いざ履いてみると,さすがはLee。
うーん,やっぱりイイ。

買っちゃおうかな・・・。
いやいや,今日はやめておこう。
いや買っちゃおうか・・・。
いややめておこう。

もしここが原宿キャシディだったら,
このあたりで
「あ,どうですか?履きました?
よかったら僕にも見せて下さいよブツブツ・・・」と
外からささやきが聞こえて
いいタイミングで試着室の外に
出ることが出来るのだが・・・

この店ではもちろん,
そういう声は一切聞こえない。

この場合・・・・

履いたまま一度外へ出るべきか,
試着室内で試着を完了させるべきか?

それが問題だ・・・。

試着したまま外へ出たところで,
店員さんが寄って来るようにも思えない。
かといって,ここで試着を完了させて
着替えてる途中にいきなり
「あ,どうっすか?開けますよ。」
なんて言われたら・・・。

と,そんな事をあれこれ考えているうちに
ふと気がつけば試着室内にて
もう5分近く経過している・・・・。

イカン,
変な客だと思われる。

もしこれが男子トイレだったら
「あいつきっと <大> の方だぜ」と
言われてしまうに違いない。
個室での5分間とは,そんな時間だ。

我に帰り,ダッシュで着替え
おそるおそる試着室のカーテンを開ける。
すると・・・

店員さん二人は,
相変わらずレジのところで
ずーっとしゃべっている。
こっちを気にする様子は全くナシ。

その会話の内容は・・・
「ディッキーズさぁ,セールかけちゃう?」
「色モノとかあんま売れてないっスからね」

結局,試着したパンツを元の場所に戻して店を出た。

その時,
古着屋お約束,「よろしくどうぞ」のかけ声は,
もちろんなかった・・・。

by boppuccino | 2006-12-18 00:00 | story